日々の思いを本気で伝える!修造コラム

2021年04月18日【国別対抗戦】「報道ステーション」の裏側

今回、1年4ヵ月ぶりにフィギュアスケートを現場から伝えさせていただいた。

その中「報道ステーション」では、バブル内での取材で、選手の裏側を伝えることができた。

ソチ・平昌オリンピック2大会連続で金メダルを獲得した羽生結弦選手。

選手がリンクに上がる前にウォームアップする場所には無人カメラが設置してあり、その映像があまりにも衝撃的だったのだ。

壁に向かって一人座り、首を左右に大きく、または縦に激しく振り続ける。

黙々と続けることなんと10分!

その光景に僕は釘付けになった。

何なんだこれは!

羽生さんに話を伺うと、「耳石を動かしているんです・・・難しいので、体のバランス感覚を整えるトレーニングと思ってもらえればいいです」とのこと。

「耳石」まで意識してトレーニングしているアスリートは今まで会ったことがない。

そのとき僕は、羽生さんがリンクで見せる感動の演技の裏側で、少しでも自分のパフォーマンスを上げるために、どれだけ考え、どれだけの時間を費やしているのかとただただ感服した。

いつもは見えない裏側を知ると、その選手から放たれる想いがより強く伝わってくる。

実は、今回報ステの中継で起こった裏側もお伝えしたい。

少し長くなりますので、先に謝っておきます。申し訳ありません。

報ステでは、羽生さんの裏側を伝えるため、羽生さんが実際にウォームアップを行っていた場所から伝えた。

中継も終盤に差し掛かり、もちろん羽生さんが行っているのはただ座ってのトレーニングだけではない、激しいジャンピング系のトレーニングもしているということを動きも交えて伝えたところ、僕の左ふくらはぎに「ピン・・・」という音とともに、激痛が走った。

そして、その瞬間に悟った。肉離れだと。

歩くのもままならない状態。でも僕はもう選手ではない。伝えることがプロである。

ただ、次の日の報ステでは、大きな壁が立ちはだかることになる。

フィギュアスケートの中継が終わり、報ステまでほとんど時間がない中、ディレクターとともにその日の構成を考えていく。

そのとき勝負した内容は、織田信成さんとリンク前の解説席で、男子フリーの演技を生解説し、VTR後に移動して、僕と織田さんと一緒にインタビューエリアから伝えることに。

中継本番では、宇野昌磨選手がインタビューエリアで涙したこと、コロナ禍でフィギュアスケート選手にとって苦悩があったことを伝え、その想いを聞いたところ、織田さんのやさしい想いがあふれ、生放送ならではの生きた時間となった。

ただ、その放送の裏側を知っている人は少ない。

僕らに立ちはだかった壁とは、VTRに入ってからインタビューエリアにおりてくるまでの時間だ。1分15秒。

僕は冒頭リンク前の解説席にいる。そこから映像がVTRにのって、おりてくるまでの間にインタビューエリアにたどり着かなければいけないのだ。

試してみた。左ふくらはぎをテーピングでぐるぐる巻きにし、痛さに耐えながら僕が歩いてインタビューエリアにたどり着けた世界最速時間。1分20秒。

あぁ、間に合わない・・・できない・・・無理だ・・・みんなの脳裏にはその言葉しかなかった。

ただ、できる!と伝えて続けてきた僕らだ。考える時間はない。

そのときとっさに判断をして行動をしたのが以下の映像だ。

まさに報ステで20年以上行ってきたからこその、みんなのチームワークあってこその奇跡。

まさにCANDO。“できる”とともにそこには“感動”があった。

裏側を知ることで、より想いが伝わることもある。

どんなことにも、裏側がある。

これからも、裏側にも目を向け、そこに隠されている選手の思いも感じながら伝えていきたい。

ちなみに、痛めたのもやはり足の裏側だった 松岡痛造