日々の思いを本気で伝える!修造コラム
2016年02月08日【報道ステーション】最大のライバルが二人三脚 男子柔道「重量級改革」
今回取材させていただいたのは、リオオリンピックでのメダルが期待される「柔道」。
今までも、山下泰裕選手、斉藤仁選手、井上康生選手、鈴木桂治選手、石井慧選手といった多くの選手が金メダルを獲得してきた、柔道の花形と言われる重量級。
しかし、4年前のロンドンオリンピックでは、残念ながら惨敗でした。
日本柔道がかつてない挫折を味わう中、改革に乗り出したのが、井上康生さんと鈴木桂治さんです。
全日本男子監督に就任した井上さんが打ち出したのは、重量級の再建。
「重量級は重量級のための別のプランで強化を図っていく」という目的を実現するために、
井上監督が強く希望したのが、鈴木桂治さんの重量級コーチへの就任です。
過去はライバルだったかもしれませんが、この改革を成功させるためには、
ライバル同士が手を組んでやらないといけないという強い思いがあったそうです。
そして、勝つために必要な一番のポイントは何か伺ったところ、それは「対応力」とのこと。
「今世界中で行われている格闘技をルーツにした横文字の”JUDO”というものを世界各国の選手が作り上げている。
いわば、格闘技の複合体と戦うためには、対応力を磨く必要がある」と。
本来、漢字の”柔道”は、相手の襟や袖をつかみ、しっかり組んでから投げるのが理想なのですが、
横文字の”JUDO”では、不十分な組手からでも、”柔道”にはない攻撃を仕掛けてくる。
そんな海外勢に対応するために行ったのが「世界の格闘技を知ること」でした。
例えば、ロシアの格闘技「サンボ」もその一つ。
さらに、対応力を高めるために見直したのが練習内容。
ひたすら量をこなし、体と心を鍛える従来の練習法だけでは”非効率的”と考えていた井上監督は、
練習量も大切だけれども、練習の質を充実させ、高めることも重要と考えたのです。
通称「部分稽古」と言われる練習では、試合で起こり得るあらゆる場面を想定し、
1つ1つ対応策を体と脳に叩き込んでいきます。
こうして進んでいった重量級改革ですが、目に見えた結果が出なかったのが100kg級。
そこで、2014年4月、井上監督と鈴木コーチが下した苦渋の決断・・・
それは、この年の世界選手権への100Kg級の代表派遣見送りでした。
どうしてこのような決断をしたのか伺ってみると、鈴木コーチからはこんな言葉が。
「4月に最終選考の試合が行われるんですが、この試合で勝った選手が代表が選ばれるんだねっていう空気になってしまっている。日の丸をつけることに慣れてしまっている感じがとても嫌だった」と。
その当時、100kg級の代表に選ばれると目されていた羽賀龍之介選手は、
井上監督の高校・大学の後輩で、数々のタイトルを獲得し、「井上康生2世」と言われた逸材でした。
しかし、羽賀さんは、代表派遣見送りとなった世界選手権を会場で観ていました。
そして、代表選手の柔道着をクリーニングに出したり、選手の座る場所を取ったり、
言わばマネージャーがするようなことをしていたという羽賀選手。
その経験が本当に悔しかったそうです。
その悔しさがあったからこそ、その後の練習では「これぐらいでいいだろう」という思いがよぎっても、「まだまだ駄目だ」という思いが勝り、その甘さを掻き消していく。
一切の妥協を捨てて、柔道に向き合った羽賀選手は、1年後にカザフスタンで開催された世界選手権で、無事に日本代表の座をつかみました。
そして結果は、見事、4大会ぶりとなる金メダル獲得です!!
日本の重量級改革が、一つの成果を示した瞬間でした。
井上監督や鈴木コーチにお話を伺っていると、僕の方がゾクゾクして、「男」「日本」というものを感じましたね。
中でも、すごいなと思ったのが、その「柔軟さ」。
お二人は、世界のトップに立った金メダリストです。
日本の柔道は、一本を取るという柔道に、理想とこだわりを強く持っている。
ですから、普通なら、その理想とこだわりの柔道をすれば金メダルが取れると教えるはずです。
なのに、思い切りかけ離れた横文字の”JUDO”を取り入れていく、その柔軟さは素晴らしいなと思いました。
さまざまな改革を経て、いよいよ迎えるリオオリンピック。
井上監督と鈴木コーチが4年かけて追い求めてきた答えがそこにあります。
「日本柔道 重量級の完全復活」 いやがうえにも、期待が高まります!!