日々の思いを本気で伝える!修造コラム
2015年06月03日【全仏オープン準々決勝】錦織圭選手vsツォンガ選手
錦織圭選手の今年の全仏オープンが終わった。
錦織圭 1-6、4-6、6-4、6-3、3-6 ツォンガ(フランス)
今日のローランギャロス、センターコートは敵が多かった。強かった。
● ツォンガはモハメッド・アリだった
デビュー当時から、ツォンガの風貌がモハメッド・アリに似ていることからつけられたニックネーム。
それは外見だけではない、テニスもそうだ。今日のツォンガは、軽快だった。切れがあった。
蝶のように舞い、蜂のようにさした!
圭の強打を軽やかなフットワークとともにかわしていく。
それはまるでアリのジャブ(ボクシングで力を入れずにパンチをいれ警世していくこと)のようだ。
そして、チャンスと見ればカウンターの強打!
そのプレイはフランス人だけではなく誰でも惹きつけられてしまうテニスだ。それによって圭は・・・
自分を見失った・・・
いつも以上に無理をしてプレイしていた。
勿論、アリ、いやツォンガのプレイが良かったのもあるが、平常心を失った圭。
そこには他の要素も重なった・・・
● 完全アウェー
フランスのお客さんは特別だといわれている。特に地元の選手に対しての応援はすさまじい。
その雰囲気に呑まれ、テニスではなく、応援に敗れてきた選手を僕はたくさん見てきた。
ツォンガは、フランスで最も人気がある選手、しかもお客さんとともにプレイするのが好きだ。
今大会男子で唯一準決勝まで残っているフランス人選手であり、まるでアリのようにお客さんとともに戦う力は想像以上だった。
ツォンガにとって“引退”という文字が近づいてきている。
昨年の全仏は現地で見ていたが、海外の解説者も“ツォンガは今年で最後かもね”という話をしていた。
だからこそ、全仏に懸けるツォンガの思いもお客さんは感じながらの後押しがあった。
そして圭の仕草もお客さんを熱くさせた。
圭は、本当に珍しいくらいイライラしていた。それをお客さんが見逃すわけがない。
ラケットを投げた瞬間、圭に対して、強烈ブーイング・・・ストレートパンチを食らった雰囲気だ。
そしてチェンジコート中は、観客席でウェーブが起きはじめた。
圭自身も今まで経験したことのないアウェーを感じたことだろう。
● ローランギャロスの想像を絶するウインド!
昨日は特に風が強かった。あそこでプレイしてみると分かるが、センターコートでプレイしている所は、風が舞い、風の吹き方に変化がある。
非常に風が読みにくくなるのだ。
ローランギャロスは、フランスのナショナルセンターで、ツォンガは普段からここで練習している。
そして全仏オープンでも、センターコートでプレイできる機会が多い。
まるで風を全て読んでいるかのようなプレイだった。
圭にとっては、風のあるセンターコートは初体験。戸惑いは隠せなかった。
セカンドセット、風の影響で看板が落ちてくるアクシデントがあり、30分以上の中断があった。
言い方は悪いが、その中断は圭にとって少し気持ちを落ち着かせる時間にもなった。
そこから自分のテニスを取り戻し挽回が始まったのだ。
● 赤土が赤世界地図に
みなさんも画面を通じてコートに変化があったと感じたと思います。
これまでのローランギャロスは真っ赤にコートが染まっていた。ただ今日のコートは違った。
真っ赤ではない。世界地図のようにところどころまだらになっている。強風がそうさせたのだ。
土の上に砂がある箇所、そして風で砂が吹き飛び、剥げてしまっている箇所がある。そうなるとどうなるか・・・
コートに砂がない箇所は球足が早くなり、そしてイレギュラーバウンドが多くなる。
勿論相手にとっても同じ条件ではあるが、繊細な圭にとっては、少しの狂いがミスに繋がる。
また砂のない箇所のフットワークは変わる。スライディングができないため、感覚が狂うのだ。
その点においても、ツォンガの動きテニスは、赤世界地図コートを自分のものにしていた。
2セットダウンからの奇跡の勝利とはならなかった圭だが、この試合、そしてローランギャロス、グランドスラムから沢山の経験を積むことができたと思う。
それは、圭だけではない。
日本人選手皆に伝わっている。
ローランギャロス2週目からジュニア大会が行われているが、日本人選手も参加している。
残念ながらみな破れてしまったが、この準々決勝をみて、圭と同じように悔しさを感じ、そしてこの場所で自分も必ず勝って見せる!そんな強い心が圭を通じて生まれたと報告があった。
圭のテニス、そして行動は全て日本テニスの蓄えになっている。
冷静にここまで記してきた自分ですが・・・
圭にとって、グランドスラム制覇のチャンスだっただけに、、、
悔しいです。残念です。辛いです。
試合中、圭の諦めない姿に心を打たれた。感極まった。夜中涙が止まらなかった・・・
11歳の頃、シャイで人前では思いを伝えることができなかった選手が、あの雰囲気の中で、何度も何度もガッツポーズを作って自分を奮い立たせ戦っている・・・
これだけでも僕にとっては奇跡です。
圭ありがとう!
一番悔しいのは誰なのか・・・
圭に決まっているじゃないか!
次は芝のシーズンが始まります。気持ちを切り替えていくしかない。
だからこそ、ウザがれても僕は圭に応援ソングを贈りたい。
できる、できる、圭ならできる♪ 圭は、日本の、宝なんだから!
Don’t worry, don’t worry. Be—–happy!
修造