日々の思いを本気で伝える!修造コラム
2014年01月08日報道ステーション ノルディック複合 渡部暁斗選手~独自の滑りでメダル獲得へ
残すところあと1ヵ月と迫ったソチオリンピック!
日本人選手の活躍が期待されますが、その中でも今回メダル候補として取材させていただいたのは、
ノルディック複合の渡部暁斗選手、25歳。
ノルディック複合とは、まず、ジャンプを行い、成績の良かった順からクロスカントリー10キロを滑る競技なのですが、渡部さんは、今シーズン、ワールドカップを6戦戦って、4回表彰台にあがり、昨シーズンの年間総合ランキングは3位と世界トップクラスの実力の持ち主です。
そして、その成績にはある特徴があり、表彰台に立った大会をみてみると、
すべてクロスカントリーで順位を上げているんです!
従来、日本人選手が苦手としてきたクロスカントリーですが、
渡部さんはなぜこんなに強いのか、そのヒミツを伺いました。
すると、その答えに驚いたのですが「力を使っていないということ」。
「スキーは体重が乗っているときにスーッと滑っていくので、それには力がいらない。
他の選手が「グーグー」と力を使って走っている間に、
渡部さんが「スースー」と力を使わずに同じスピードが出せれば、
力をためていられる、要は「エコな走り」ができる」んだそうです。
そんな走りを見て周りの人から「ホバークラフト」と言われたりするんだとか。
「ホバークラフト」は、空気の力で宙に浮き、水上や陸上を走る乗り物ですが、
渡部さんの滑りも「スースー」とスムーズ。
筋力ではなく体重移動で進むので、スタミナのロスも抑えられますね。
でも、渡部さんがこの独自の滑りをどうやって身につけたのか気になりますよね?
それは、「スラックライン」と呼ばれる、綱渡りのようなもので、
5cmほどの帯の上を15m渡るアメリカ発祥のスポーツをやっているからだとか。
僕も挑戦させていただいたのですが、いやいやムリムリ。
帯の上に乗るだけで左右に大きく揺れて、まったく安定しません。
ところが、渡部さんは信じられないくらい簡単に進んでいきます。そして難なくゴール!
一見ノルディック複合とはまったく関係ないように思うのですが、かなり揺れて安定しない足場は、
スキーに乗るときのポジションを確認するのにすごく役に立つんだそうです。
渡部さんは、このスラックラインに長いスキーだと思って乗る感覚なんだとか。
この感覚こそ、ホバークラフトのような滑りには欠かせないものなのですね。
今では世界トップクラスの実力を誇る渡部さんですが、実はクロスカントリーが好きではなかったと言うんです。
スキーが盛んな長野県白馬村の出身の渡部さんは、お母様につれられて、
1998年に開催された長野オリンピックのジャンプの団体戦を見たそうです。
みなさんもご存知のように、日本のジャンプ団体は金メダルを獲得しましたね。本当にすごかった。
当時9歳だった渡部さんにとって、それは衝撃の体験で、
「ぎゅうぎゅう詰めで人がすごかった。声とか勢いみたいなものを体感して、
それがすごいインパクトがあって、それでやる気スイッチが入った」んだそうです。
もちろん、小学生の頃の憧れは「ジャンパー」だったそうですが、長野県に生まれた選手たちは、
中学校に上がると自動的に複合をやらないといけないそうなんです。
それで、クロスカントリーを始めたそうですが、最初は走るのが嫌だったという渡部さんの気持ちとは裏腹に、評価されたのはクロスカントリーの方。
そして、2006年のトリノオリンピックには、17歳で代表に抜擢され、
その4年後には、メダル候補としてバンクーバーにも出場しましたが、表彰台には遠く及ばず・・・
その当時、口では「メダルを獲りたい」と言っていましたが、
何となく実力がないというのは自分でも分かっていたという渡部さん。
実力がないのに、メダルを獲りたいと言わないといけないのが少し苦しかったそうですが、
ただ、ソチオリンピックに対しては「次は絶対にメダルを獲る」と思ったそうです。
そして、自分と真摯に向き合い、さらに上を目指して練習を重ねて迎えた今シーズン。
渡部さんはさらなる進化に挑んでいました。それは「ラストスパート」。
「自分のMAXスピードをさらにワンステップ上げる」という目標のためにやったことは、
今まで「スー」っと滑っていたスキーをグッと自分から滑らせていくということ。
「ホバークラフト暁斗」の最後はいったい何になるのか聞いてみると、「四駆」になるとの答えが!
「ホバークラフト」で体力を温存し、最後は「四駆」でスパート!!
そして、先月のワールドカップ第5戦でも、この新しい滑りの可能性を十分に見せました。
未だかつて日本の複合選手が個人戦で「金メダル」を獲ったことはない。
その「金メダル」をどうしても獲りたいという渡部さんの強い意志を感じましたね。
渡部さんのことは、トリノオリンピックのときから取材させていただいていますが、本当に強くなりました。
今回の取材の中で、渡部さんがこだわっていることがあると伺いました。
それは、「最初から先頭に立って周りを引っ張っていって、最後まで逃げ切って勝つ」ということ。
そうすることによって「渡部に負けた」と周りから言われたいそうです。
本来は後ろについて行った方が、前の選手が風除けにもなりますし、有利だと思うのですが、
正々堂々と戦いたいという気持ちから、今シーズンはこのことにこだわってやっているんだとか。
ただ、「オリンピックはどうするんですか?」と聞いてみると
「オリンピックは別。何が何でも、どんなことをしても、金メダルを獲りにいく」という力強い答えが返ってきました。
スゴイ戦いになると思いますね。今から楽しみで仕方ありません。