日々の思いを本気で伝える!修造コラム
2018年07月11日ウィンブルドン準々決勝に向けて
日本の錦織圭選手がウインブルドンベスト4に向け、そして頂点に向け、ノバク・ジョコビッチとの戦いが迫ってきた!
激戦に向け、僕の思いを伝えたい。
これまでに3度のウインブルドンを制しているN.ジョコビッチは、徐々に自分のテニスを取り戻してきている。全盛期最強のジョコビッチではないが、今回のウィンブルドンでのジョコビッチの試合を見ていると、そこに近づきつつあると言ってもいい。
そんなジョコビッチを相手に、圭が試合後、雄たけびを上げるには一番の約束事がある。
それは…
★ファーストサービスの確率をあげる!
これに尽きる!芝はサーブが圧倒的に有利になるコート。ほかのコートに比べるとボールが弾まず、滑ってくる。またカーブ、シュートのように曲がり方も激しい。ただし、速度やキレがないとボールはバウンドした途端に失速し、リターンの餌食になってしまう。だからこそ…
ファーストサービス確率70%、獲得率70%。これができれば、勝算あり!
ストロークに関しては、錦織選手の方が上だ。しっかりとサービスをキープできれば、間違いなく圭が有利になると僕は見ている。
そしてもう1つ、圭に叫びたい!
ウィンブルドンの罠にはまるな!
ウィンブルドンはテニスの聖地。誰もが勝ちたい場所だ。だからこそ本気になる。ただ、その思いが力み(りきみ)に変わる。まさに僕はこの罠に苦しめられてきた。では1995年になぜ僕はベスト8という結果を残す事が出来たのか?
それは、芝で自然体でプレイできたから!
芝でのプレーは、少しでも力みが出た瞬間、ボールに威力がなくなり、力のないボールは芝に吸収され相手の餌食となる。一所懸命プレイをしようとすればするほど、勝ちたいと思えば思うほど、そしてウインブルドンというテニスの聖地だと感じるほど、その力が力みに変わるのだ。
だからこそ、ウィンブルドンでは、最も力みのない天才型プレイヤー ジョン・マッケンロー、ピート・サンプラス、ロジャー・フェデラーといった選手たちが、ここ聖地で何度もトロフィーを掲げてきたのだと僕は思う。
僕が人生で初めて力まずにプレイできたのが、95年ウィンブルドンで戦った時の試合だ。心は情熱でいっぱいだったが、プレイは冷静さを保てていた。まさに自然体でナチュラル修造。自然と芝と心を共有できた時間だったのだ。
いままでの圭は明らかに力みがあった。芝に対しての自信の無さも加え、それでも結果を残さなければという思いが、より圭のテニスを勝利から遠ざけていたように思える。
しかし、今年の圭は芝と仲良しだ!
特にガルビス戦の第4セットでの圭は、まさに “Super Zone 芝 圭!”。ゼロ力みで、芝の流れに逆らわずにナチュラル圭で戦っていた。そう、力が抜けたときに、芝は女神となる。
僕が戦った95年ベスト4をかけたピート・サンプラスとの対戦がいい例だ。力みもなく、芝の女神を掴んだベスト8。
そして、気持ち的にもアグレッシブにすべてがいい調子で臨んだ準々決勝。試合が進む中で、当時世界ランク2位のサンプラスを相手にリードした途端、「勝てる」という文字が頭をよぎり、芝の女神が罠へと変わってしまったのだ。あっという間に追いあげられ、さらに力んで気づけば負けていた。
圭の話に戻すと、圭は4回戦のタイブレークをものにすると、第4セットは自然体そのもの。全身から力が抜け、Super Zoneに入ったように芝の女神と共に軽やかにコートを舞っていた。久しぶりに見るZone圭だった。
さぁ、いよいよノバク・ジョコビッチとベスト4をかけての戦いが始まる。正直、ここからが本当の勝負だと思っているだけに、罠はウインブルドンの芝だけではないように思える。
★ジョコビッチ罠も待ち構えている!
圭は、今年2度の戦いに破れているが、どちらも試合内容的には圭が勝っていた。圭の方がいいテニスをしているのになぜ勝てなかったのか。そこにはジョコビッチトラップ(罠)があったと考えられる。この大会を見る限り、ジョコビッチは自分のテニスを取り戻している。彼は、本当の崖っぷちに立たされてからが強い選手だ。もう勝てない、参った…そんな仕草を見せる。相手にとっては “こっちのものだ” という気持ちになった途端に隙をついてくる。さすが、頭脳とともに世界一を獲得したプレイヤーだけある。
そんな窮地に追い込まれた崖っぷち状態に強いジョコビッチだが、崖っぷちに強いと言えば、今大会タイブレークという崖っぷち全てをものにしてきた圭の心はさらに強い。そして、未だファイナルセットでの勝率は歴代1位。みなさん、崖という漢字をよ~く見てみてください。
崖
何か気づきませんか? そう、『崖』という文字には、圭がいる!
長々となってしまいましたが、最後にもう1つ言わせてください。
周りから言われる “修造さんを越せますかね!” その問いに “喝!”です。
僕にとって、圭はスカイツリーの何倍もすでに僕を越しているのだ!僕が見据えているのはただ1つ。ウィンブルドンの頂点に立つ!ということ。
だから、「ラスト8クラブに仲間入りした錦織選手、ようこそ!」と言いたいところだが、圭が入るところはもっと上、「ウィンブルドンチャンピオンクラブ」だ!
圭、一緒に戦わせていただきます 修造
注:ウィンブルドンチャンピオンクラブ…なんてものはありませんが、歴代チャンピオン仲間入り、という思いを込めての造語です(- -;