日々の思いを本気で伝える!修造コラム
2018年07月12日錦織圭選手、ベスト4ならず…
テニスの聖地、ウィンブルドンセンターコート
僕がプロになったときに掲げた夢。それは、ウィンブルドンのセンターコートでプレイすること。96年、僕は夢の舞台で戦い、そしてプレイ中(まさに夢の中)で感じたことがあった。
「この聖地で日本人選手に戦ってほしい。僕と同じ感激を味わってほしい。」と全身から感じたことを思い出した。
その夢舞台で、錦織圭が戦った。
僕は今日、圭とウィンブルドンのセンターコートで戦った。
心臓がはちきれそうになるくらい、1ポイント1ポイントが凄まじい戦いだった。圭自身試合中、何度も“このポイントを奪われたら準決勝への道が途絶える”という苦しい場面があった。でも、圭は諦めなかった。
そして、N.ジョコビッチのメンタルもまた、揺ぎなかった。怪我からカンバックし、とてつもないテニスを披露してくれたジョコビッチに、敬意を表したい。
『ノバック、あなたは強い!おめでとう!』
そして今、圭はロッカールームでとんでもない悔しい思いをしていることだろう。チャンスがあっただけに…。そして僕の心も…折れてしまった。1回戦からの圭を見ていて「ウインブルドン優勝できる!」と思わせてくれるテニスをしていただけに、ここまで頑張ってくれた圭には申し訳ないが、正直、悔しい思いでいっぱいだ。
でも、圭には本当に心から感謝している。何故なら、僕にもう一度ウインブルドンを思い出させてさせてくれたからだ。
さぁ、ここからは心を鬼にして、僕自身が感じた各セットのポイントを記していきたいと思う。
第1セット 6-3 N.ジョコビッチ
★イレギュラーバウンドの対応力
セカンドウィークのウインブルドンは変わる。選手たちが放つ強烈ボールと動きによって芝がどんどん剥げていくのだ。綺麗な緑色は茶色に。これが同じテニスコートなのか?
僕がベスト4をかけてピート・サンプラスと戦った時に感じた印象だ。
圭も同じ心境になったのでは…
ライジング、ボールのあがりっぱなを打っていく圭にとっては、少しのバウンドの誤差でリズムが崩れ、ミスが目立ってくる。調子はいいがボールのイレギュラーバウンドにより、ミスが出る。しかもミスした後のリアクションが消極的だった。バウンドが狂ったことに目を向けすぎた。一方ジョコビッチは、これまでのウインブルドンの経験を活かし、心をコントロールできていた。
第2セット 6-3 錦織圭
★圭の崖っぷちサーブ&ボレー
今日のジョコビッチの壁を崩すことはできない。1セットをみて、そう感じた人も多かったのではないでしょうか。
1-1 錦織から 0-40 錦織サーブ
この試合、勝負あった!っと思った瞬間だった。まさに崖っぷち!そこからの圭の攻撃力、戦略がゲームをひっくり返したのだ。
15-40からこの試合はじめてのサーブ&ボレー。ジョコビッチの最高のリターンをボレーでしのぎ、続いてサービスエース。ジョコビッチもわかっていた。このゲームを奪えば自分のものだと。超攻撃で圭がキープ。ジョコビッチはラケットを地面に叩きつけ警告を獲られる。
第3セット 6-2 N.ジョコビッチ
★綱引きバトル、圭がチャンスをピンチに!
序盤に最も見ごたえがあったのが、第3セットだ。お互いに最高のプレイでゲームは行ったり来たり。2-2のジョコビッチ0-40。完全に圭ペース。このまま圭が最後まで突っ走っていけそうな雰囲気と気合だった。しかし、大チャンスを奪う事が出来ず、圭はチャンスを完全にピンチに変えてしまった。そして、気持ちが途切れてしまった。凡ミスが、力みが出て、そこからはあっけない時間となってしまった。
第4セット 6-2 N.ジョコビッチ
★心途切れる
いきなりジョコビッチのサーブをブレークするが、すぐさまブレークバックされる圭。疲れがでたのか集中力が欠け、足が止まってしまいプレーが単調に。そのまま時は淡々と過ぎていった。そんな中でもジョコビッチは声を出し、自分を奮起させ、圭の様子をうかがいながら一気に突き放そうとギアをあげていく。そのギアが途切れることなく、最後まで心のエンジンをかけ続けたジョコビッチ。辛い言い方だが、最後まで心がタフだったのはジョコビッチだった。粘り強い、そしてタフなメンタル。錦織選手が最も欲しいものをジョコビッチは持っている。
残念な結果ではありましたが、錦織選手がやっと手に入れたウインブルドンならではのテニスを見ることができたことに感謝です。そして、圭の夢はまだまだ続いていきます。そう、次は今年最後のグランドスラムであるUSオープン。悔やんでも悔やみきれない悔しい思いを、得意のハードコートで思いっきりぶつけて欲しい!
圭よ、タフになれ!心も体もまだまだ強くなれる!
今年のウィンブルドン、準々決勝まで楽しませてくれてありがとう圭!
そしてあらためて言わせてください。ベスト8おめでとう!
いつかきっと…と信じている 松岡修造